石山緑地について

國松 明日香

 

 CINQ(永野光一、松隈康夫、丸山隆、山谷圭司、國松明日香)は、1993年に札幌市から石山緑地南ブロックの基本設計の依頼を受けた。

いまだかつてない大きな規模の仕事に、5人は興奮を覚えながらも、今まで制作してきた彫刻とは、幾分趣を異にするこの仕事について、どの様な方向で関わっていくべきかを、かなりの時間を費やし議論した。

現地を訪れ、地形を読み取りながら、全体を4つのブロックに大きく分けることにした。

一番南側に位置する空間を「午後の丘」と名付け、なだらかな丘の上に大小織り交ぜた立方体の石をちりばめ、石切場と公園との関係づけを意識できるものとし、次の空間を「ネガティブマウンド」と名付けた。

「ネガティブマウンド」の空間には樹木がほとんどなく、色彩も灰色一色に近いドライな空間となっている。

あたかも野外劇場であるかのような空間とした。

その次に現れる空間は「沈黙の森・赤い空の箱」とし、樹木を多く植樹し、真っ赤なジャングルジムのような彫刻を設置し、子ども達がその上で遊べるものとした。

一番北側に位置する空間は、「スパイラルスプリング」と名付けられ、水を使った潤いのある広場で、ここにも遊具を兼ねた彫刻を複数配置した。

 

 ここで5人が意思確認をしたことは、全ての造形物は5人の共同制作とすること。

産業遺跡として残っている石切場跡には、手を加えないこと。

そして使う人のことを常に念頭に置いて制作することだった。

公園がだんだんと出来上がるにつれ、ここを使ってくれる人達への関心がどんどん増していった。

完成まもなく、当時人気上昇中の野村萬斎が加わって上演された「薪能」は大変話題になった。

沢山の観客を魅了する素晴らしいもので、ネガティブマウンドを神秘的な空間に変える、とても感動的な舞台だった。

 

 今、石山緑地を会場に東日本大震災からの復興支援を目的とする活動の一環として、ボランティア団体が「いしやまキャンドルナイト」を開催している。

階段状に水紋のように広がる空間にキャンドルの明かりが点され、幻想的な空間を出現させている。

地域の人達の力で地元の「石山緑地」が活かされ、まさにこの緑地にふさわしいイベントが行われていることをとても嬉しく思う。

公園は出来上がったときが完成ではなく、市民の皆様に利用されることで、いつまでも成長し続けることができればとても幸せなことだと思う。